宝島社 『このミステリーがすごい!』 大賞

大賞賞金1,200万円 文庫グランプリ賞金200万円!

第25回『このミス』大賞 1次通過作品 石飛翔子の飛翔

思いつきで探偵を始めた型破りな女流棋士が
バラエティ豊かな謎解きと頭脳戦に挑む
軽快かつ贅沢なエンタテインメント

『石飛翔子の飛翔』穗積弘一

 二十歳で女流名人位に就いて天才と呼ばれ、現在はスランプに陥っている三十一歳の女流棋士・石飛翔子。テレビで活躍すべく芸能事務所に入った翔子は、マネージャーの道野一歩に「私、探偵になることにした」と宣言する──本作はそんなプロローグで幕を開ける。第一章では翔子が小学生の依頼を受け、将棋の駒が割られた事件を解決して“美しい結末”を演出するが、全てがヤラセだと道野に見抜かれてしまう。
 第二章は将棋教室の道場長が殴られて重症を負い、容疑者の大学生を救うために翔子が詰将棋の暗号に挑む話。第三章は翔子が“大学将棋の団体戦に替え玉出場して欲しい”と頼まれ、相手の裏をかく奇策を弄するエピソード。さらに翔子はかつての奨励会にまつわる謎に挑み、元彼と再会して“三十年前の密室の不審死事件”を探っていく。
 破天荒な女流棋士を主役として、日常の謎、暗号解読、頭脳戦、密室殺人などを盛り合わせ、カラフルなエンタテインメントに徹した一作。バリエーションを増やすだけではなく、内容ごとに工夫を凝らしている点が好ましい。ギャグを交えた軽い会話、気の利いた蘊蓄、ストレートな将棋ネタといった要素もそれぞれに楽しく、読み物として高く評価できる。山場の第五章はいささか強引だが、この分量に内容を詰めたことは賞賛すべきだろう。多くの人に勧めたい痛快娯楽小説である。

(福井健太)

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