宝島社 『このミステリーがすごい!』 大賞

大賞賞金1,200万円 文庫グランプリ賞金200万円!

第25回『このミス』大賞 1次通過作品 不可能建築士の設計推理

殺人からくり屋敷を設計する
謎の天才建築士と、トリックを見破る
変人建築士の対決!

『不可能建築士の設計推理』小谷茂吉

 建築設計事務所に勤める佐倉紫衣(私)は、親友の新屋敷奈央の家に泊まったが、翌朝、奈央の夫の刺殺死体が発見される。腹部には槍のようなものが突き刺さっていた。紫衣が刑事の取り調べを受けている最中、彼女の上司・江刺家(えしや)律が乗り込んできた。彼はこの家で殺人事件が起きることはわかっていたと宣言し、この家の本当の設計者は獅子戸美一であると看破する。天才建築士だった獅子戸は、自分が設計した家に殺人のためのトリックを密かに仕込んだというのだ。
 綾辻行人の「館シリーズ」は、同じ設計者が建てた別々の館で殺人事件が起きるという設定のシリーズだが、その強い影響を感じさせる作品である。獅子戸美一なる建築士が設計した家を舞台とする二つの事件を描いた連作構成で、探偵役の江刺家は獅子戸と因縁を持っている設定だ。本作の長所は建築に関する知識の豊富さ。そんなトリックは可能だろうかと思うものの、もっともらしいディテールで補強されているので実現性はあまり気にならない。一方、現場となった建物の構造がわかりづらいなど、説明不足なところもある。何より、エピソードが二つしかないのが物足りないし(この構成を選ぶならば最低三つは欲しいところ)、物語の畳み方にも問題がある。そうした弱点はあるものの、二次選考まで残すに充分な面白さを具えていることは確かだ。

(千街晶之)

通過作品一覧に戻る

SPECIAL CONTENTS