宝島社 『このミステリーがすごい!』 大賞

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第25回『このミス』大賞 1次通過作品 古民家鑑定士・東雲飛鳥のフィールドノート

古民家鑑定士と元刑事のコンビという異色の探偵役が
雪深い古民家民宿で発生した連続殺人に挑む
このコンビならではの謎解きを満喫せよ!

『古民家鑑定士・東雲飛鳥のフィールドノート』阪口克

 群馬県警捜査一課の刑事であった八雲健人は、定年退職を機に、長年の夢であった古民家暮らしを始めた。いつかここで蕎麦屋かパン屋を開きたい、と夢を見ながら。だが、妻子と別居して古民家で暮らし始めると、どうしたわけか体調が優れなくなり、悪夢にうなされるようになってしまう。
 そんな八雲の状態を見かねて、娘が手を差し伸べた。友人である古民家鑑定士の東雲飛鳥と、古民家雑誌ライターの雨宮灯影に依頼して、父の購入した古民家を調べて貰ったのだ。
 娘の支援策のおかげで体調を取り戻した八雲は、これまた娘のはからいで、東雲と雨宮とともに、雪深い群馬県水上の古民家民宿「啄木鳥荘」を訪れた。その夜。他の三人の客とともに八雲たちが宿泊するその宿で、変死事件が発生した。密室状況の囲炉裏部屋で……。
 本書では、古民家鑑定士こと東雲飛鳥が主な探偵役となり、元刑事である八雲健人がその相棒を務める。まず、このコンビを読者に紹介する作者の手つきが洗練されていてよい。八雲が暮らし始めた古民家を鑑定し、彼の悩みの原因を特定していく姿を読者に丁寧に紹介することで、読者は、東雲が探偵役を務めることを自然に受け入れてしまう。最初の“古民家探偵”らしさを愉しみつつだ。
 こうして探偵の特徴と能力をきちんと示したうえで、作者は読者を雪の啄木鳥荘へと案内する。そこで起きる“古民家ならでは”の連続殺人。まさに東雲と八雲のコンビに相応しい事件であり、読者のワクワクは募る一方だ。事件の解明もきちんと行われているし、なんなら上質の本格ミステリらしい味わいを備えたかたちで解明されている(未読の方に向けての紹介文なので詳述は避ける)。謎の設定、その真相、さらには解明の手順。いずれもが上出来であり、しかも、この探偵コンビに相応しいものに仕上がっているのだ。
 さらに、古民家売買の暗部を描く3年前のエピソードが、プロローグや幕間として語られている点も評価したい。これがあることで、動機の面が強く補強され、真相が深みをもつ。なんとも達者な構成だ。ついでにいえば、3年前の出来事での“あるアイディア”も伏線を活かしたものであり、ミステリファンの心をくすぐるように書かれている。
 その他、図表が数多く含まれている点、事件が決着した後のラストでの匂わせ(あれが伏線になるのか、という衝撃)など、いくつもの素敵な要素が鏤められていて愉しく読むことができる。
 なお、退職して一般人となった八雲が、妻であり現役の県警捜査二課課長である千寿江とのパイプを活かして謎解きに必要な情報を得る場面があるが、ここはもう少し改善の余地があるように感じた。
 とはいえ、全体としては前述したように加点要素の方が圧倒的に多い。迷いなく二次選考に推す。

(村上貴史)

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