宝島社 『このミステリーがすごい!』 大賞

大賞賞金1,200万円 文庫グランプリ賞金200万円!

第25回『このミス』大賞 1次通過作品 好感度ゼロのプレシード

他人からの好感度が見えてしまう
特性を持つ大学生が
爆死事件の謎に迫ってゆく

『好感度ゼロのプレシード』芝野友基

 他人から自分への好感度が絶対音感のようにわかってしまう「絶対好感度感」の持ち主が、日本全国に数百万人いる。主人公の大学生・藤原由宇もその中の一人。彼女は、自分を愛していた筈の祖母からの好感度がゼロだったというトラウマを背負っている。そのため由宇は、好感度を見えなくする医療機器「ブラインド」の開発に携わることになった。しかし、チームのメンバーは目標もタイプもバラバラであり、由宇に対する好感度がかなり低い人物も含まれている。そしてある日、「ブラインド」の試作機が爆発し、大学職員が死亡するという事件が起きた。
 大きな謎は二つあって、一つは爆発事件をめぐるフーダニット、もう一つは絶対好感度感そのものの秘密。後者については、作中の人物(直接の登場人物というより、その世界に生きる人々)が何故もっと早くそのことに気づかなかったのかに疑問が残る。だが前者、つまり真犯人の隠し方は工夫が凝らされている。途中、明らかに真犯人に直結する手掛かりが出てくるのだが、そこから目を逸らさせるミスリードがなかなか巧妙なのだ。トラウマを抱えつつひたむきに研究を進めようとする主人公のキャラクター造型もいいし、結末の爽やかさも好感が持てる。特殊設定を上手く活かして、謎解きと主人公の成長とを融合させた秀作である。

(千街晶之)

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