第25回『このミス』大賞 1次通過作品 おかえりなさい、ミスターマリーキュリー
犯罪を芸術に昇華する狂気の怪物
事件の鍵をにぎる伝説の天才贋作師
新人捜査官みさきが真実の向こうに見たものとは!
『おかえりなさい、ミスターマリーキュリー』井原弘道
警視庁組織犯罪対策部の捜査官である葉間みさきは、連続美術館爆破事件の現場へと向かい、その恐るべき光景に驚いた。犯人は爆破犯罪をアートの領域に高める異常な表現者だった。そして、事件の背後にもうひとりの怪物の影が浮かびあがってきた。警察が爆破犯の潜伏先に突入するとそこから発見されたフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』の贋作に特有の偽造技法が残されていた。そこで世界的に有名な伝説の天才贋作師・枯柴朋邦と爆破犯とのつながりが疑われ、新たな追跡捜査がはじまった。
前代未聞の連続アート爆弾魔、世界的に知られる天才贋作師という謎の怪人がふたりも登場するのに加え、主要登場人物がみなつながっているなど、およそリアリティのない子供だましのような話かと思いきや、こうしたケレン味の強い設定や大胆な構図を思う存分に活かし、フィクションならではの醍醐味をしっかりと打ち出している。あらためて筋書きだけ見ると『羊たちの沈黙』の変奏曲といった面もうかがえるが、二番煎じの凡庸さは感じられない。最後までわくわくしながら読んでいったのは、探偵対怪人の本質的な面白さをとらえた娯楽作品に仕上がっているからだ。
(吉野仁)







