宝島社 『このミステリーがすごい!』 大賞

大賞賞金1,200万円 文庫グランプリ賞金200万円!

第25回『このミス』大賞 1次通過作品 ラスト_ガール

人類滅亡後29年を経て、一人の少女が生存者として発見されたーー
彼女とヒューマノイドによるロードノヴェル&謎解きの物語

『ラスト_ガール』三ノ浦竜郎

 ヒューマノイドの視点で進む小説である。
 舞台となるのは、2099年の東京。“人類滅亡”から29年が経過し、AIと自律型人工人間が最低限のインフラと人類の記憶を保全している。主人公である相模原十五という名のヒューマノイドもその一員で、保全省の遺物調査課において、まさに遺物の調査や保全を担当していた。ある日、相模原十五は奇妙な現象が続いている家を訪ねた。荻窪にあるその家には、何故か二階にもドアがあった。階段もバルコニーもなく、空中に開くそのドアは何の目的で設置されたのか。その理由を推理した相模原十五は、結果として一人の少女を発見する。そう、この世にはまだ生存者がいたのだ。そして彼女は29年のコールドスリープから解き放たれ、目を覚ます。記憶を失った状態で……。
 目覚めた少女と相模原十五は、保全省のある上野を目的地としつつ、彼女が何者なのか、そして何故コールドスリープさせられていたのかを明らかにする手掛かりを探すこととした。その過程で、二人は不思議な出来事や印象的なヒューマノイドと出会い、謎を解いていくのである。いってみれば、ロードノヴェルと日常の謎が組み合わさったようなものだ。そしてその両者が上質である。出会いと謎解きと別離を経ての成長、あるいはシンプルながら切れ味鋭い謎解き、いずれもが素晴らしい。しかも謎が徐々に大きくなっていく愉しみもある。そして、この物語らしい結末へと鮮やかに着地する。序盤から読者に提示していたピースを使って、だ。つまり、個別の謎だけでなく、全体としても大きなミステリドラマとしてきちんと構成されているのである。文章も安定していて、物語に安心して身を委ねることができた。
 人類滅亡後の世界の造形については評価が分かれる可能性がある。新型全身性炎症症候群(医療ナノマシンの暴走)による滅亡と、その後のAIとロボットによる社会運営という設定は、この物語を進めるにおいては十分な強度を持っていると判断したが、2099年(人類滅亡時点でいえば2070年)にしては、2026年の現在からあまり進化がないと感じてしまうかもしれない。例えば東横線まわりで。とはいえ、その部分は本書の価値のコアを損なうものではなく、補修可能と考える。
 ためらいなく一次通過とする。

(村上貴史)

通過作品一覧に戻る

SPECIAL CONTENTS