宝島社 『このミステリーがすごい!』 大賞

大賞賞金1,200万円 文庫グランプリ賞金200万円!

第25回『このミス』大賞 1次通過作品 密室少女とノーマッド

馬を育てる女性と、人目に耐えられない少女
壮大な北海道を舞台に
ふたりが謎を解いていく

『密室少女とノーマッド』一戸了

 探偵役は一風変わっている。ひとりはコンサイナーの白神紗智。セリ市場に出すための馬を、生産者から預かって育て上げるのが仕事である。もうひとりは、なんと紗智の前にボストンキャリーに入った状態で登場する。その少女・久我つばめは極度の視線恐怖症の中学生だった。学校での出来事をきっかけに不登校となり、親との関係もこじらせていた。そんな彼女を、紗智は北海道の日高地方で預かることになったのだ。
 かくして、奇妙な同居生活が始まる。紗智は折しも一頭の馬を預かっており、馬と女子中学生、両方の面倒を見ることになったのである。つばめはなかなか紗智に心を開かなかったが、とある謎をふたりの力――つばめの知識と紗智の推理力――を合わせて解き明かしたことから、少しずつ距離は縮まっていくかに見えた。
 ふたりは更なる謎に立ち向かうが、ついには大きな事件が……。
 大きな牧場、サラブレッドの育成、紗智の母校の農業高校などなど、北海道ならではの背景が描かれる。それが単なる背景のみに終わらず、ストーリーそのものに関わっているところはポイントが高い。探偵役となる紗智とつばめのキャラクターも実にいい。設定などは全く違うが、『珈琲館タレーランの事件簿』を最初に読んだ時と同じような味わいが感じられた。
 馬関係の説明などは(作品として重要なのはわかるが)、もう少しあっさりしていてもよいと思う(説明は読者を飽きさせない案配が肝心)。またところどころ文章にひっかかりも感じられるが、これは十分に修正可能だろう。
 ともあれ、北海道ミステリにして馬産ミステリ、そしてキャラクターの成長物語として、十二分に評価したい。

(北原尚彦)

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