宝島社 『このミステリーがすごい!』 大賞

大賞賞金1,200万円 文庫グランプリ賞金200万円!

第25回『このミス』大賞 1次通過作品 四グラムの断罪

わずか4gの微小破片を、犯人は宇宙空間でどうやって被害者に当てたのか
スペースデブリ回収を生業とする、元天才設計者が謎に挑む

『四グラムの断罪』白峰仁

 宇宙を高速で飛んできた微小デブリが宇宙ホテルの外壁を貫通、中にいた宇宙開発企業のCEOが喉を直撃されて死亡した。保険会社の神崎はスベースデブリ回収業者の嵯峨に、凶器となったデブリの飛来ルートの解析を依頼。そのデブリはかつて嵯峨が設計し、軌道上で爆発した有人実験船のボルトだった。そして被害者はその爆発の罪を嵯峨ひとりに押し付け、天才設計者だった嵯峨を業界から締め出した人物だったのだ。
 自身も容疑者となりながら、デブリの軌跡を解析する嵯峨。そこに見えてきたのは、ある人物の計画だった──。
 天才設計者が無実の罪を着せられて失脚、スペースデブリ回収業者としてひとりで宇宙を漂っているという設定にまず痺れた。失脚した主人公が何かに身をやつすという設定の物語は多いが、スペースデブリ回収(しかもイケオジ)というのは萌えるというかエモいというか、いやあ、ありがち設定が舞台を変えることでこんなに魅力的になるとは。
 宇宙を飛んできた凶器という、どう考えても偶然の事故としか思えない事態をひとつずつ解き明かしていく過程もいい。正直なところ軌道だ計算だというあたりは証明のしようがなく言ったもん勝ちだが、物語と文章の力でちゃんと読者を納得させる構成になっている。特に最後の一押しとなった要素は意外性に富んでいて実に良かった。犯人がわかるのが早いと思ったが、そこからの主人公の起死回生の展開は見事。舞台設定、人物、構成の緩急、文章のどれをとっても極めてレベルが高い。
 ひとつだけ難を言うなら、犯人の造形にもう一押し欲しい。会社を守りたいという動機は、嵯峨やもうひとりの容疑者が持っているドラマティックな背景に対して弱すぎる。動機をもっと強めるか、あるいは犯人のキャラを変えて意外性を強める演出をするかなどの工夫があると、さらに良くなると思う。

(大矢博子)

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