宝島社 『このミステリーがすごい!』 大賞

大賞賞金1,200万円 文庫グランプリ賞金200万円!

第25回『このミス』大賞 1次通過作品 アネモイア・シーカーズ デジタルイタコとデータ化された死への餞

イタコの口寄せとデジタルな疑似人格
その対比をモチーフに一族の悲劇を描く
オカルティックな素材を活かした異色サスペンス

『アネモイア・シーカーズ デジタルイタコとデータ化された死への餞』入屋眞琴

 祖母の教えを受けてイタコを営む久遠寺かなめは、悪徳企業(通称「魂コネ社」)が提供する“デジタル魂迎島”──AIで故人のbotを作るシステムを敵視し、ハッキングで顧客リストを盗み、利用者に口寄せを売り込んでいた。久遠寺は“弟の賢人を魂コネ社に拉致された”という女・狩野咲の相談を受け、咲が雇ったなんでも屋の長光を加えた三人で竜神湖へ向かい、廃寺で圧縮袋に詰まった死体らしきものを目撃する。しかし次の瞬間、それは忽然と消え失せていた。
 ネット企業で呪術グッズの通販を担当している雨宮秀人は、寿退社するシャーマンの後任を探すためにオーラ鑑定士のかなたと接触し、圧縮袋を使った動物虐待動画の存在を知る。そこには見覚えのある護符が映っていた。雨宮は護符作りに関わった久遠寺に逢い、護符を持つ男とその母親がマンションで焼死したと告げられる。いっぽう賢人に咲の身辺調査を頼まれた私立探偵・神無月蓮太郎は、虐待犯が魂コネ社の創設者の息子だと突き止めていた。
 故人のbotを使うビジネス、技術職としてのイタコ、生き物を窒息させる犯罪者などを散りばめ、様々な立場から一連の事件を描くサスペンスである。オカルトありきの設定は好みが割れそうだが、怪しげな謎をずらりと並べた後、それらを結びつけて全体像を明かしていくプロットには牽引力がある。不可能犯罪の肩すかしは気になるものの、関係者たちにそれぞれの結末を用意し、不意討ちのオチを付ける構成はいかにも達者。安定した力量に裏打ちされた秀作といえそうだ。

(福井健太)

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