第20回『このミス』大賞 1次通過作品 紅い祝杯は人魚の血

推理作家の豪邸で猟奇殺人が繰り返される
大胆なトリックと捻りを備えた本格ミステリ

『紅い祝杯は人魚の血』大立風

 推理作家・綾代清蓮の主催するパーティに招かれた四人──編集者の鯉川仁織と水無水、推理作家の鳥山薫と嘉月征四郎は、湖畔に建つ綾代の豪邸”人魚館”を訪れた。使用人の真北千尋、テレビプロデューサーの吉井崎晃一、カメラマンの野上達平、地方アイドルの佐々木夏菜、マネージャーの城戸隼といった参加者たちも集まるが、そこへ綾代が行方不明になったという噂が流れる。そして翌朝、綾代家の長女・伊津美と真北の”内臓を抜かれた上半身”が発見された。さらに清蓮のものと思しき下半身が見つかり、綾代家の次女・清歌とその夫・喜一の”内臓を抜かれた上半身”も出現する。
 雪に閉ざされた洋館の連続猟奇殺人、密室と死体をめぐるトリック、一族の秘密などを盛り込んだ本格ミステリ。古風な道具立てだけではなく、奇抜な謎解きからクライマックスの逆転劇まで、総じて正統派の手つきを感じさせる(最後に別の味付けはある)。周到な犯行計画を背後に隠し、強引なメイントリックを成立させた作りも良い。キャラクターたちの印象が薄く、小説の表現力に物足りなさはあるが、謎解きのプロットは及第点。伸び代への期待を込めて支持したい。著者は二〇二〇年に「紗子とサコ」で「賞金総額最大1億円40漫画賞」の「禁断の恋愛漫画賞」に入賞した漫画家である。

(福井健太)

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