第20回『このミス』大賞 1次通過作品 館と密室

密室殺人が多発するパラレル日本で
少女が数々のトリックを暴く”密室づくし”の意欲作

『館と密室』金平糖

 日本初の密室殺人が発生し、犯人が無罪になってから三年──日本では密室殺人が急増していた。高校生の「僕」こと葛白香澄は、幼馴染みの朝比奈夜月に「イエティを探しに行こう」と誘われ、埼玉県の”雪白館”へ向かう。今は亡き本格ミステリ作家・雪城白夜が”密室事件”を演じた屋敷をホテルに改装した建物である。
 葛白はそこで中学時代の同級生・蜜村漆璃と再会する。その翌朝、宿泊客の刺殺体が密室で見つかった。唯一の通路である橋が焼け落ち、孤立したホテルで密室殺人が相次ぐ中、日本初の密室殺人犯である蜜村は次々にトリックを見抜いていく。

 三年間で約三百件の密室殺人が起き、密室探偵のランキングが公表され、法務省の作成した密室分類をもとに密室講義が語られる。そんな漫画めいた世界を設定し、クローズドサークルの連続密室殺人を描く──という内容からも解るように、本賞では珍しい濃厚な本格ミステリだ。個々のトリックにインパクトは無いが、密室づくしの趣向が楽しく、探偵役の属性も秀逸。あえて謎を残す作りにも味がある。タイトル等の改善点は目に付くものの、刊行レベルに届き得る作品と評したい。

(福井健太)

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