第20回『このミス』大賞 1次通過作品 ネコノベル

パソコンを駆使する猫の語りで
“連続子猫殺し”の顛末を辿るハードボイルド

『ネコノベル』クロバマサト

 パソコンを操る猫の「おれ」こと貴船と幼馴染みの猫・才門は、人間が子猫を捨てる場面に遭遇した。二匹は子猫と話して食料を分けようとするが、子猫は大きな黒い影に攫われ、貴船は幼少時のトラウマを思い出す。ほどなく頸椎を壊された子猫の死体が見つかり、地元のボス猫・響に呼び出された貴船は「四本足のでかいやつ」を見たと証言するが、周囲の信用は得られなかった。
 数日後に新たな子猫の変死体が見つかり、貴船は大師匠である老猫スコグフルドに人間の仕業だと断言される。さらに事件は続き、二つの地域──東潤沙と西潤沙の猫たちの対立が顕在化し、貴船はインターネットで人間の猫に対する所業を知る。しかし真相は別の所に隠されていた。
 知性的な猫の饒舌な語り、人間による品種改良や処分のモチーフなどは、アキフ・ピリンチの〈雄猫フランシス〉シリーズを彷彿させる。地域抗争をめぐるハードボイルドと猫を絡める着想も珍しくはない。それを踏まえたうえで、語り口やプロットの安定ぶりと設定のキャッチーさは十分に評価できる。少なくとも結末のアイデアはオリジナリティを目指したものだ。パッケージングのしやすさ(商業性)も含めて、加点要素の多いテキストであることは間違いない。二次に強く推す次第である。

(福井健太)

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