第20回『このミス』大賞 1次通過作品 或る一日署長の女

爆発事件が発生したのは、警察の中
一日署長のタレントが標的なのか
警察内を調査する監察員が謎を追う

『或る一日署長の女』伊藤丈太郎

 北多摩警察署では、タレント・遊佐カオリ子を一日署長としての交通安全イベントを数日後に控えていた。そんな中、カオリ子を迎えて打ち合わせが行なわれていた部屋のすぐ近くで、爆発事件が発生する。爆発したのは、不在だった警務課員・神(じん)のバッグ。だがカオリ子に脅迫状が届いていたこと、爆発したバッグがカオリ子のものと同じ製品だったことから、本来は彼女が標的だったものと推察された。
 警視庁警務部人事一課監察係に所属する西岡京子は、警察内の不祥事を調査するのを業務としていた。彼女は現在、二階堂達夫とコンビを組まされていた。だが以前彼女がコンビを組んでいた人物こそ、当時は敏腕監察係員であった神だったのである。
 二階堂は神のことを嫌っている上、京子に対して見下した態度を示していた。京子は二階堂よりも神に協力して、真相に迫っていく……。
 「一日署長のアイドル」「警察署内での爆発事件」と、発生する事象はなかなか読者の目を惹きつけてよろしい。全体としての文章は読みやすいし、京子と神をはじめとするキャラクター配置もなかなかうまい。
 その一方で、説明の文章のバランスが悪い(いかにも説明ぽかったり、一方でもうちょっと説明が欲しかったりする)部分がところどころにある。描写における形容でも、ややちぐはぐでは、という箇所がある。全体として、ブラッシュアップは必要だろう。
 総合評価では一次のハードルを越えるにはぎりぎりかもしれないが、やや甘めに判定して、通過とした。
 ついでながら一般論として申し上げておくと、プロの作家の応募の場合は、この「甘め」判定は適用されないので念のため。本賞はプロ・アマ問わず応募可能だが、すでにプロデビューしている方にはハードルが高くなり、評価は「辛め」になる。これは一次選考だけの話ではなく、二次・最終を含めて選考委員(及び編集部)全体の共通認識である。プロの方ならば、作品の評価もしっかりできるはずだ。よって「これは絶対に受賞する」という自信作をお送り頂きたい。

(北原尚彦)

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