第20回『このミス』大賞 1次通過作品 バーチャルの世界で見た光景

動画配信サイトを巡る
ライバーたちの闘いと
ハンター探し

『バーチャルの世界で見た光景』DAi

 主人公の女性は、友人のいない女子大生碧衣。動画配信サイトで配信を行うライバーだ。ただし、自分を映すリアルライバーではなく、バーチャルアバターを用いるバーチャルライバーである。
 アリスと名乗り、ゲームをプレーする画面ではアニメキャラクターのような姿で写る。他のライバーとコラボすることで登録人数を増やそうとしている。リスナーが増えると承認欲求が満たされるし、広告収益を得ることができる。アリスにはまだ三万しかリスナーがいないが人気のライバーは百万を超える登録者を持つ。
 アリスがライバーとなった目的は憧れていた人気ライバー三日月ミリアが半年前に突然消えたわけを探るためだった。ただこれまでミリアのことを知ろうとしたライバーたちはみな炎上したり消えていき、ミリアのことは禁忌となっていた。
 アリスが匿名なのと同様に、非難してくる相手も誰だかわからない。そこへ最大手の動画配信サイトのライバーからコラボの誘いが来て、ますますアリスを脅す攻撃がいろんな方面から増える。
 夏休みが終わると現実の学生生活でも、いわれのない非難を受けてしまう。このあたりで四分の一か。あとはずっとネットの世界でのいろんな相手との形を変えた闘いである。実際の動画サービスというものすら見当がつかないけれど、人が争うのはどんな時代でも変わらぬ姿で現れる。だから切実な様子は伝わる。
 登場人物は限られた世代だけの狭い世界を描いた小説だが、そこを新しさとして評価していいのかも知れない。

(土屋文平)

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