第20回『このミス』大賞 1次通過作品 大学受験殺人事件

骨折した女子高生が医学部受験
同級生や先輩が次々に
死んだり消えたりするわけは?

『大学受験殺人事件』藪坂華依

 私、堀川真優は私大受験の帰りにホームから落ちて足を骨折したため、病院から車いすで国立大の医学部二次試験へ。ここで同じ受験生として中学からの友人穂高と、穂高と付き合っていた雅先輩と出会う。すると雅が謎の転落死を遂げて、自殺かと推定される。
 入試が終わって戻った病室で、すでに入学していた秋津先輩とも久しぶりに会う。雅先輩とは翌日会う予定だったから自殺なんてするわけがないと、やはり再会した友人毬花は言う。翌日には毬花が行方不明となる。次は穂高が消える。
 ともかく、主人公の吹奏楽部の知り合いたちが次々に出てきては、わけのわからない状況になっていくのだ。秋津先輩にはアメリカ留学中だった一卵生双生児の兄弟がいて難病で入院している。秋津の父親は医学部の教授だし、真優の母親も医者だから、病院ミステリーといえるだろう。
 医学の専門用語がたくさんでてきてややこしい分だけ、人間関係のゴチャゴチャはさほど気にならない。そこからもいろんな人が殺されていくので、事件の解決まで忙しく事態は進む。
 この小説の良さは、語り口の穏やかさと若い主人公の知的な感覚に支えられたディテールにあると思う。
 例えば冒頭で、これから国立大学二次試験前期日程の二日目に車いすに乗るというところで、吹奏楽部でユーフォニアムという重い管楽器を使ってたことが身体を持ちあげるのに役に立つとか、骨折しているのに考えが前向きでこのトーンが最後まで変わらない。これはユニークな持ち味でしょう。
 その分だけ、事件が深刻に見えにくかったりするあたりは、全体的に調整すべきかも知れません。

(土屋文平)

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