第19回『このミス』大賞1次通過作品 いびつな垂蛹

家族を奪った男たちを許さない――
彼女は一人、また一人と殺しを重ねる。
少女の復讐と、刑事の追跡の終着点は……?

『いびつな垂蛹』白紙乃かるた

 家族の仇を討つために殺人を繰り返す少女と、事件を追う刑事の物語。
 萩原沙希は8年前に家族を失った。四人組の強盗が家に押し入って、彼女だけが生き残ったのだ。事件を忘れようとして生きてきた沙希も今では高校生。ある日、美術部の後輩の父親に出会った彼女は衝撃を受ける。その父親は、かつての強盗の一人だったのだ。抑えられていた紗希の復讐心がよみがえる。自らの罪に怯えながらも、彼女は強盗犯たちを、殺害する計画を実行に移す。
 一方、刑事の鶴城百合子はある連続殺人犯を追っていた。新たな犠牲者の遺体を見た百合子は疑念を抱く。これは、連続殺人犯とは別の人物による、偽装された犯行ではないのか……?
 沙希と百合子の視点を中心に、サスペンスに満ちた復讐劇が描かれる。かつての強盗事件の生き残りとして警察にマークされながら、自らの復讐を進める沙希の姿。要所に仕掛けられた意外な真実。彼女が復讐のターゲットを探し出す過程も含めて、緊張に満ちたストーリーを楽しめた。
 偶然に頼るところが多い、という弱点はある。「後輩の父親が自分の仇だった」のような、物語を進めるための偶然は受け入れやすい。だが、警察が伏せている捜査上の秘密を沙希がたまたま知っている経緯など、プロットの弱点を取り繕うような偶然は「言い訳」のようにも見えてしまう。
 とはいえ、このスリリングな物語の魅力も捨てがたく、一次選考通過と判断した。

(古山裕樹)

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