第19回『このミス』大賞1次通過作品 砂中遺物

中国に飲み込まれてしまった日本。
犯人護送中の車両が何者かに襲撃される。
背後に渦巻く人々の思惑と運命は……

『砂中遺物』龜野仁

 近未来の日本を舞台とした冒険アクション。
 日本政府が解体され、国土のほとんどが隣国に併合されてしまった近未来。人身拉致を請け負うチームの一員・由佳は、国連暫定統治区――東京で党幹部を拉致する作戦に失敗し、逃走中に和人自治区の人民警察に逮捕される。彼女の身柄は国連暫定統治区に引き渡されることになり、民警神奈川公安局の雑賀が護送を担当する。だが、由佳と雑賀を乗せた護送車両は、高速道路で何者かの襲撃を受けた……。
 ところどころに配置された激しいアクションシーンの描写はもちろん、それを成立させるプラットフォームの組み立てが絶妙だ。日本が中国の一部となってしまうことによって、見慣れたはずの都市の風景が中国化する。繁華街から住宅街に至るまで、知っているはずの空間が異質なものに変わってしまう。そうした描写の中で、日本語教育や日本人の妊娠・出産が厳しく制限されていることがさりげなく語られ、作中の日本人が置かれた過酷な状況が浮かび上がる。
 由佳、雑賀、そして雑賀の同僚・劉の三者の視点を中心に進むストーリーは、シンプルながらも意外な展開に満ちていて、一気に読ませる勢いがある。
 欲を言えば、もっと伏線を仕掛けた驚きがあれば……とは思うものの、一次選考通過には十分な力を持つ作品だ。

(古山裕樹)

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