第19回『このミス』大賞1次通過作品 エキストラ

死者の記憶世界に潜る力を持った〈潜航者〉。
この能力を警察が殺人事件解決に活かす世界で、
異能者を待ち受ける切なく儚い結末とは?

『エキストラ』瀧本無知

 死んだ人間の最後の二十四時間の記憶世界に潜ることができる〈潜航者〉が存在する世界。科警研情報科学第四研究室、通称「ダイバー・フォース」のエースである夕原久遠は、記憶世界のなかでさらに別の遺体に潜航できる数少ない〈多重潜航者〉だった。
 夕原のつぎの潜航先は、荒川の河川敷で見つかった身元不明の二十代男性の死体。刺し殺されたのち長期間冷凍されており、いざ潜航してみると、夕原が降り立った記憶世界は七年前の東京。すると、目の前に見えていたスカイツリーの第一展望台で爆発が! 夕原は自分以外の第二の〈潜航者〉の存在を察知し、被害者と加害者の特定を急ぐ。つぎつぎと新たな局面が訪れ、一筋縄では行かない今回の任務。それはやがて、自身をこの世界に導き、二年前に姿を消した師である青柳典仁へとつながっていく……。
 アイデアがどうしても夢枕獏『魔獣狩り』のサイコダイブや映画『インセプション』をほうふつとさせてしまうこと、システムとルールの説明や繰り返される潜航と時間の行き来がいささか複雑で呑み込みにくく、〈潜航者〉の存在が極秘ではない世界にもかかわらず背景となる社会や世相の書き込みに充分な筆が費やされていないなど、気になる点は多い。だが、二十五歳の若さでこの入り組んだ物語をまとめ上げた筆力は素直に評価したい。途中まではあまりふさわしくないように思えたタイトルも、ラストに至って意味が際立ち、切なく儚いロマンを感じさせる点も悪くない。今後の期待値もプラスして二次へ。

(宇田川拓也)

通過作品一覧に戻る
作品を立ち読み