第19回『このミス』大賞1次通過作品 死神の二律背反

目覚めると、少女の告げる謎の言葉が――。
予定にない生と死を入れ替える“死神”となった男が、
その役割を終えるときに下した決断とは?

『死神の二律背反』烏丸数人

「安心して……、貴方を、正しく殺してあげるから――」
 目覚めたばかりで朦朧としている笹野木壮介は、少女の謎めいた言葉を耳にする。すると学生服に身を包んだ彼女は、おもむろに取り出した果物ナイフを壮介の心臓に突き刺し、彼がすでに死んでいることを伝える。和泉詩子と名乗るその少女に導かれるまま、ある豪邸にたどり着いた壮介は、そこで学生のような優男・三瀬修哉から信じがたい説明を受ける。壮介は『予定にない死を遂げた者』であり、『予定にない生』を享受する者に死を与える“死神”の役割を負わされていること。その仕事の対価として生き返るチャンスが与えられるが、ひとつだけ条件があることだった。こうして壮介は詩子をパートナーに、予定にない生と死に向き合い、死神としての“業務”を進めていくことに……。
 ファンタジックな設定ではあるが、既存の枠を軽々と飛び越えるようなアイデアの目新しさや奇抜さはない。加えて、いささか強引さが目に余る箇所もあれば、書き損じなのかと首を傾げるようなクセのある文章に何度も躓いたことも事実だ。けれど、そうした減点部分はひとまず措くとして――と思えるくらい、己の損得よりも相手を思いやる心を持った人間を描くオーソドックスなストーリーの魅力に好感を覚えた。最初はギクシャクとした壮介と詩子の関係性を次第に変化させ、終盤の“決断”につなげる話運びと読後感のよさも評価したい。少し甘めの採点であることは認めつつ、二次に推す。

(宇田川拓也)

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