第19回『このミス』大賞1次通過作品 放課後は、ジャズ喫茶で謎解きを

情緒あふれる佐世保の街を舞台に
ジャズレコードにまつわるミステリーを解くのは
ジャズマニアの女子高校生と初心者の転校生

『放課後は、ジャズ喫茶で謎解きを』邑上主水

 佐世保に転居してきた高校生・住吉隆弘は、母と二人暮らし。他界した父を恨んでおり、その父が好きだったジャズもあまり好きではなかった。
 だが、父の遺したジャズレコードに奇妙な謎があることに気づく。クラスメイトの有栖川ちひろがジャズ好きであることを知って、彼女に相談する。これをきっかけに、住吉隆弘は有栖川ちひろがバイトするジャズカフェに通うことになった。
 かくして、彼らの身に降りかかるジャズレコードに関係した様々な謎を、ふたりは協力して解いていく……という趣向。形式としては岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿』と似ているが、それはあくまで枠組みの話で、オリジナリティは保たれている。
 ジャズやジャズレコードにまつわる薀蓄がちりばめられ、それも厭味なく読めた。ジャズに関する基礎知識がなくても大丈夫。全体的にさくさく読めて、キャラクター造型も設定も巧みだ。
 しかし各エピソードにおけるミステリー度にばらつきがあるのが難点。弱いエピソードはかなり弱く、謎が明かされたときのカタルシスが小さい。少なくともここのところは改稿が必要であろう。全体的にプラスマイナス勘案し、総合点で一次選考通過とした。
 ――確認したところ、本作と同題の作品が第30回鮎川哲也賞に応募されていたことが判明した。一次は通過しているけれど、2020年1月28日に二次で落選しているので、5月末〆切の本賞との二重投稿には当たらず。改稿する期間も、まああったかと思われる。なのでそういう意味での無効とはならないが、どうせ同じ作品を再利用するならば、時間をかけて徹底的に改稿して臨むことが望ましい。『がん消滅の罠 完全寛解の謎(応募時タイトルは『救済のネオプラズム』)』(岩木一麻)などがその好例である。
 また作者は、すでに商業出版デビューをして日本推理作家協会の会員でもある方。そういう方ならばなおさら、他賞の落選作(改稿してあるにせよないにせよ)の再応募でなく、全く新しい作品で勝負して頂きたい。

(北原尚彦)

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