第19回『このミス』大賞1次通過作品 死語になる

言葉が人格を持つ世界と現実世界
自殺したアイドルに何があったのか
そして「死語決定戦」の行方は

『死語になる』小松こまち

 言葉たちが人格を持って暮らしている「言葉の世界」。「庄和ルコ」も、ここの住人だった。親友は「冗談はよしこちゃん」。
 だが人間界でその言葉が使われなくなる――つまり「死語」になる――と、言葉の世界から追い出されることになる。
 同時に追い出された言葉たちは、人間たちの記憶を「本」の形で収蔵した図書館へと送られる。そして制限時間内に自分の言葉を一番多く見つけ出した者だけは、元の「言葉の世界」へ送り返してもらえるのだ。それ以外の言葉は、消え去ることになる。庄和ルコは「冗談はよしこちゃん」のほか、「なるへそ」「チョベリグ」「チョベリバ」「オバタリアン」「マブい」「許してちょんまげ」と闘うことになった。競争はスタートし、やがて庄和ルコという言葉はスキャンダルを起こして性悪女と非難されたアイドルが語源だと判明する。
 その一方で、中原大貴という少年の記憶がひもとかれる。彼の幼馴染「庄和莉子」は、アイドルになった。莉子は人気を獲得していくが、やがて悲劇が起こった。
 言葉の図書館では、収集をしていた言葉のひとりが死体となって発見される。一体、ここで何が起きているのか。そして更なる事件が起こる。これらの事件の「犯人」は、果たして誰なのか。そしてまた人間界で庄和莉子に何があったのか、その真相も徐々に明らかになっていく……。
 言葉の世界と現実の世界、両者において展開される謎解き。変化球も変化球、かなりのくせ球だ。だがそういう変化球こそ、うまくバッター(読者)を惑わした時には、爽快感を味わわせてくれる。これは正にそういう作品だった。わたしとしてはかなり好みであり、大いに楽しんで読ませて頂いた。文章はかなり達者だ。ミステリー新人賞の中でも特に懐の広い(と、わたしは思う)『このミステリーがすごい!』大賞ならば、この作品も受け入れられる。二次以降の選考における評価が楽しみである。

(北原尚彦)

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