第19回『このミス』大賞 次回作に期待 北原尚彦

『推理遊戯』田島巧仁
 
 まずはここ数年の傾向から。過去に『このミス』大賞や他賞に応募して落選した作品を、改めて応募するものが増えています。今回も、わたしの担当作にも他の一次選考委員の担当作にもありました。これは第15回の『がん消滅の罠 完全寛解の謎(応募時タイトルは『救済のネオプラズム』)』(岩木一麻)、第17回の『怪物の木こり』(倉井眉介)が大賞を受賞したことの影響でしょう。
 完全な二重投稿(他の賞への同時期の応募)でなければ無効ではありません。ですが、落選した作品をちょこっといじって再応募しても、結果は変わらないでしょう。
 選考過程で選考委員から提示された意見を踏まえてしっかりと改稿した上で「これは○○年の××賞に応募した作品を改稿したものです」と、堂々と書いてください。
 過去作を再応募するならば、それと同時に新作でも応募するぐらいの意気込みで臨んでください。一旦最後まで書き上げた作品が可愛いのはよくわかりますが、受賞すれば過去作が日の目を見るチャンスもあります。コンスタントに作品を書き続ける実力を身につけて下さい。
 さて、今回の「次回作に期待」作品は、『推理遊戯』(田島巧仁)です。
 夏目純は青葉大の法学部に通い始めた大学生。いとこであり同じ大学に通う神埼恭一とルームシェアしている。夏目は刑法の講義の練習問題において、アクシデントで白紙提出してしまった。それを聞いた神崎は、問題を解決してやるからと一緒に次の講義に出席し、問題に対する解答を述べたのである。
 これをきっかけに、神埼と夏目のもとに、事件が舞い込むことになる。高校の用具室で発生した人間消失の謎。アパートの廊下で絞殺されていた男が手にしていたスマホの謎。ミステリー作家の別荘における謎解きゲーム中に発生した密室の謎……。いずれの謎も、神崎は見事に解き明かしていく。夏目はその経緯を記録として書き留めるのだった。
 ――本作は「語り手の同居人が探偵である」とか、「その語り手が事件の記録を書くことになる」など、神埼恭一と夏目純の関係性や役割分担を考えると、シャーロック・ホームズ(&ワトスン)のトリビュートにもなっているようです。最初の二章のタイトル「白紙の追及」と「依頼人は二人」も、ホームズ物の『緋色の研究』「犯人は二人(恐喝王ミルヴァートン)」のもじりになっているのかもしれません。とはいえ単純なパロディ作品というわけではなく、ホームズ知識が要求されることもないので誰でも安心して読めます。
 ですが、どのエピソードも肝心のミステリー部分が弱すぎて、簡単に謎が解けてしまう。簡単と見せかけてもう一度ひっくり返しがあるのかも……とも期待しましたが、ありませんでした。もっと魅力的な謎を、提示して欲しかったです。
 日本語の使い方や漢字の用法において、あちこち間違いが見られました。これはしっかり読み直しをして辞書を調べれば避けられたはずです。提出前に、じっくりとチェックをして下さい。
 描写などに説明不足なところも見られましたが、全体的な文章は読みやすかったです。慣れてくれば、もっと上達するでしょう。どんどん新しい作品を書いて、また応募して下さい。
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