第19回『このミス』大賞1次通過作品 確かに、燃えている

謎の手紙で橋の上に呼び出された三人は
それぞれ行方不明となった恋人や息子を捜していた……
果たして失踪者は見つかるのか?

『確かに、燃えている』西田快

 河井杏菜は、小学生のひとり息子を探しに緋の町へ行く。前日に、午後五時に緋の橋で、失った人を返却するというわけのわからない手紙を受け取ったからだ。橋の上には大学生の街田康平と経営者の高橋直久がいて、それぞれ同じ手紙で呼ばれていたことがわかる。橋には新たな手紙があって、赤い蝶を捕まえたひとりだけに失踪者を返すと書いてある。それぞれ大学生の恋人に経営者の娘と失踪者同士の関係はなくて、なんとも謎だらけの冒頭部分が新鮮で、物語に引き込まれるいい仕掛けとなっている。
 そこから三人それぞれが町の商店街で聞き込みを始めると、どの店でもなにやら秘密の匂いがしている。七年前の殺人事件がどうやら鍵らしい。杏菜は昔の婚約相手の医者と再会したりバーのマスターを味方につけたりして赤い蝶を探し、康平は喫茶店のアルバイトとなって情報を集める。一方、経営者の高橋は金を商店主たちにばらまいて一気に解決しようとする。このあたりの工夫も独特でいい。
 ところが翌日には杏菜の息子は誘拐されたのではなくて、元夫のところへ行っていたことがわかる。普通は主人公にはより深刻な状況が降りかかってきて、それを乗り越えるところが読ませどころのはずなのに、ここでも意外な進み方となっている。康平の恋人と高橋の娘が同じ人物だとか、話はどんどん進み、意外な犯人やら解決方法で終わる。破綻しているのかというとそうでもなく、読み終えてみると、予想外の展開で楽しめました。
 冒頭で杏菜のいなくなった息子の年齢が書かれていなかったり、細かな修正点はあるものの、さらに書き込めば良いものが書ける方だと感じました。謎の提示には成功しているのではないかと確信したので、残すことにしました。

(土屋文平)

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