第19回『このミス』大賞1次通過作品 嗜虐的世界(サディスティック・ワールド)

引きこもりの男子生徒が自作したVRゲーム
各ステージのフィニッシュ条件は「プレーヤー全員の死」
繰り返されるリアルな死のあとに待ち受けるものとは?

『嗜虐的世界(サディスティック・ワールド)』鈴涼ノ介

 始まりは穏やかな春の風景である。古川紗良という新任の女性教師が、有名進学校に着任するところから。高二の担任となって初めて出席を取ると、木戸蘭丸という生徒が無断欠席している。あとは学級委員長に自分でなろうとする佐藤が変な人物くらいで、緊張感に乏しい学校の様子が続く。
 蘭丸の欠席が一ヵ月にもなって、やっと紗良は連絡を取るが、母親の言うことは要領を得ない。あわてて学級主任と家を訪ねても、本人は出てこない。紗良は、蘭丸と小学生時代に友達だったという城ヶ崎結衣と同僚教師の藤岡、さらに佐藤を加えた四人で家を再訪し、蘭丸の部屋をこじ開ける。
 ここでいったん場面と登場人物が変わって、居酒屋でバイトをしている大学生の神谷時雨の話になり、どうなるのかと読者の興味を掻き立てる。時雨がオンラインのゲーム仲間の小学生少女と連絡が取れなくなり、会いに行こうとするところでまた話が戻る。
 蘭丸は部屋の中でゲームのヘッドセットをつけたまま死んだように横たわっている。食事は全て部屋の前に母親が置いているものですませているだけでなく、トイレにも行ってないから部屋はとんでもなく臭い。
 それなのに蘭丸は爽やかな表情をして、ゲームを作っていただけだと言う。しかも四年がかりで作ったゲームが完成したから、四人に試してほしいと頼む。
 ここからがこの小説の読みどころで、七つのステージでプレーヤーたちが異常な形で何度も殺されるのだ。このあたりが妙にリアルで迫力もある。水責め、ギロチン、怪物犬、さらにはクイズが解けないと死ぬという要素まで出てくる。四つ目のステージからは時雨もゲームに加わる。
 最後に仕掛けられた“犯人”の意図は少々無理を感じさせるものの、それが気にならないほどの残虐シーンが繰り広げられる。
 作者は、サドマゾ小説の書き手として素質がありそうで、この路線を発展させてほしい気がするくらいだ。冒頭に紗良が男性不信になったことが思わせぶりに出てきて、最後は解決して終わるのかと予想していたのだが、それっきりだったり、雑なところも目につくものの、ちょっと新鮮な内容に魅力を感じました。

(土屋文平)

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