第19回『このミス』大賞 次回作に期待 土屋文平

『冥土のならず者』森本博之
『夏花小路に妖しの余韻』沙羅景樹
 
『冥土のならず者』
 落語家のお話で、お屋敷掃除の弟子がタイ国出身の女性で、入門二年目の前座見習いというのが楽しい始まりだと思ったら、次にはマリ共和国出身のアフリカンの弟子が出てくる。仏壇の奥に隠された謎を追うのに、なんとも魅力的な始まり方をする。残念なことに、ミステリの要素が少なく、因縁話になってしまっていて、一次選考を通過させることができなかった。お話作りは安定しているし、楽しませようとする感覚も気持ちがいい。ぜひ、ミステリらしい体裁でこの雰囲気を読ませてほしい。

『夏花小路に妖しの余韻』
 手慣れた書きっぷりから経験のある方だと感じました。お話はすべてすっきりまとまっているのですが、時代小説の人情話五編ではこの賞の候補には推せなかった。
 あまりミステリ的な筋道を考えたくないのなら、別の小説新人賞に集中したほうが良いように思いました。もちろん、ミステリを書かれるなら応援したいと思います。

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