第19回『このミス』大賞 次回作に期待 福井健太

『再会の約束プロジェクト』我那覇あかつき
『バーチャルという名の仮面』DAi
『グラウンド・マスター』遠野有人
 
 募集要項に「エンターテインメントを第一義の目的とした広義のミステリー」とある通り、本賞は広義のミステリーを募っている。ホラーやSFや時代小説でも「ミステリーとしての要素や冒険小説的興味」があれば対象内。超自然を含む作品が投じられるのも当然のことだろう。
 それはそれで良いのだが、アンリアルの導入だけで満足したものか、似たような着想が目に付くことも少なくない(今年は幽霊ネタが多かった)。結果的にモチーフが被るよりも、一歩先の独自性を示すほうがポイントは高い。必ずしも新奇を求めるわけではないが、ユニークさで勝負する人には「これだけで良いのか」と自問することも大切である。
 今年度の「次回作に期待」は三作。我那覇あかつき『再会の約束プロジェクト』は、高校生たちが夢の中で”十年後の手紙”を読み、仲間が殺される未来を変えるために裏切り者を捜すSFミステリ。予知夢で殺人を知るプロットは(既視感はあるにせよ)悪くないが、隠蔽された事件はやや凡庸。年代を往還する構成はもっと効果的に使えたはずだ。
 DAi『バーチャルという名の仮面』は動画配信にまつわる物語。身元と容姿を伏せたバーチャル探偵クリスとして他の配信者たちの個人情報を晒す女子大生が、バーチャル探偵アユリに「必ず君の正体を突き止めてみせる」と挑戦される。いかにも現代的なガジェットは目を惹くが、ストーリーは”身元暴き合戦”の域を出ず、予定調和的に着地してしまう。主人公の造型や目的は興味深いだけに、長篇を支えるイベントで話を膨らませて欲しかった。
 遠野有人『グラウンド・マスター』は大掛かりな地面師詐欺の顛末。国会議事堂が中国人に建物登記されたことが判明し、若手議員が秘密裡に無登記状態に戻そうとする──という状況の独自性には拍手を送りたい。詐欺のプロセスもよく考えられているが、全体的に段取り説明の感が強いのは残念。場面ごとの盛り上げを意識すれば、珍しい設定の魅力をより引き出せただろう。著書のあるベテラン投稿者として、一層のスキルアップに期待したい。
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