第19回『このミス』大賞1次通過作品 CVキラー

才能豊かな声優の卵を狙う〈CVキラー〉の目的とは?
華やかに映る世界が抱える
深刻かつ根深い問題を照射する意欲作

『CVキラー』千羽彩広

「お前たちは何のために声優を作り続けるのか。正しい答えが示されなければ、沢樹の命はない」。〈CVキラー〉と署名された怪文書に、声優事務所プログレスの面々は忌まわしい記憶を呼び起こされる。かつてネット上で人気声優のスキャンダルを告発し、一人を廃業に、一人を自殺に追いこんだ〈CVキラー〉。活動を再開した謎の人物は、なぜプログレスが経営する声優養成所をターゲットとし、生徒の中で群を抜く演技力を備えた沢樹理恵の命を狙うのか? “正しい答え”とは何なのか? 事務所に所属する落ち目の女性声優が失踪している件と関連はあるのか? 折しも、稼ぎ頭であるカリスマ声優・君島恵真が国民的人気アニメ「セイクリッドボイス」のヒロイン役を降板し、退所する意向を表明。経営危機に瀕するプログレスの幹部は、芦月朱莉が経営する探偵事務所を訪れる。沢樹が、君島の後任を決めるオーディションを無事受けられるようにサポートして欲しいという依頼を受け、朱莉はメンタルコーチとして声優養成所に潜入する。
 最近、マニアだけでなく広く世間の注目を集めるようになった声優業界の内情を照射し、華やかに映る世界が抱える深刻かつ根深い問題をテーマにした意欲作です。沢樹に惹かれる養成所生・進藤守の視点から、声優となるためのレッスンを読者に分かりやすく見せる《アクターズサイド》と、声優事務所をターゲットとした策略を探り、〈CVキラー〉の正体を暴き出す朱莉の視点から描かれる《ディテクティブサイド》。二つの視点から無理なくストーリーを進めている点、複雑に入り組んだ犯罪を意外な結末へと無事に着地させた点はプラス・ポイント。逆にキャラクターの造型がやや類型的な点と、推敲不足により人名を取り違えている点はマイナス・ポイントですが、まずは一次通過の水準はクリアしています。

(川出正樹)

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