第19回『このミス』大賞1次通過作品 楽しい修羅場の歩き方

他人を魅了する特異体質のヒロインが
奔放な活躍を見せるライトミステリー連作集

『楽しい修羅場の歩き方』和久井透夏

 急に人気者になった小学五年生の「僕」こと笹川由乃は、自分が両親の家系で稀に生まれる”魅了体質”だと知らされる。トラブルへの対処法を学ぶため、由乃は同じ体質の親戚・笹川小夜子と暮らすことになった。小夜子のストーカーが次々に毒殺され、小夜子は罠を張って犯人を追い詰める。第一章「小夜子さんストーカー殺人事件」はそんなエピソードだ。
 第二章「ドッペルゲンガー殺人事件」は小夜子が不可解なナンパを受け、理由を探ることで殺人事件を解決する話。第三章「昔馴染み冤罪事件」では小夜子の先輩とストーカーが襲撃され、異様な人間関係が形成されていく。本作はそんな三篇を束ねた連作集である。
 本人の意志に関わらず「十人人間がいたら八人が好意的で、一人が無関心で、一人からちょっとどうかと思うような重量の愛を向けられる」魅了体質には弊害も多いが、境遇を受け入れて「修羅場は楽しむものよ!」と宣う小夜子のパーソナリティはすこぶる軽快。呆れながらも順応していく由乃の語りも滑らかだ。謎解きの味は薄いものの、解りやすい特殊スキルを活かし、超然とした探偵役とナンセンスな状況を生んだ佳作と言えるだろう。

(福井健太)

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