第15回『このミス』大賞1次通過作品 青春は、『レル』なしでは語れない
毎朝のレモン?
饒舌さが心地よい青春ミステリ
『青春は、『レル』なしでは語れない』中川つちか
高校生を主人公にした軽い読み味の連作ミステリである。長めの短編三つで構成された一作だ。
男子生徒の下駄箱に毎朝レモンが置かれているのは何故か、もしかして&どうにかして消火器から中身が抜かれているのではないか、人気者女子を盗撮し写真を掲示板に貼りだしたのは誰か――この三つの謎解きに挑んでいくなかで、主人公の公儀御一刀が友達との絆を育てていく……。
主人公の男子高校生の饒舌が心地よい。ときおり妄想が暴走したり、その反動であるかのように沈み込んだりもするのだが、それを語る一人称の記述が素敵だ。リズミカルで歯切れよく、苦笑してしまうほど愛らしい。
また、彼が思いを寄せる女生徒の造形もよい。どこか俗世間と軸がずれていて、しかも名探偵で、(主人公の視点から語られるせいか)やたらと魅力的なのである。
そうしたキャラクターの魅力に比べて、ミステリとしてのネタは若干小粒だ。小粒とはいえ、様々な可能性を吟味し、そのうえで真相を特定するという流れは紛れもなくミステリだし、動機もまた考えられている。派手な飛び道具は用いられていないが、ちゃんと造られているのだ。
語り口に馴染めない方がいるかもしれない点や中心となる四人のうち二人の存在感が薄い点などに二次選考を闘う上での弱みはあるが、この語りと謎の織りなすひとときは十分に魅力的である。
(村上貴史)














