第21回『このミス』大賞受賞作品 物語は紫煙の彼方に

『物語は紫煙の彼方に(仮題)』小西マサテル

「認知症の老人」が「名探偵」たりうるのか?
孫娘の持ち込む様々な「謎」に挑む老人
日々の出来事の果てにある真相とは

最終選考委員コメント

「レビー小体型認知症を患う老人が安楽椅子探偵をつとめる〝日常の謎〟系の本格ミステリー連作で、ラストがきれいに決まっている。」
大森望


「マニア心をそそられる趣向が凝らされており、古典作品へのオマージュも好印象。ディーヴァーのリンカーン・ライムのヴァリエーションのようだ。」
香山二三郎


「キャラクターが非常に魅力的。彼らの会話がとっても楽しい! 全体を通しての空気感、安定感が秀逸でした。魅力的な物語を書き続けていける方だと確信しました。」
瀧井朝世

小西マサテル(こにし・まさてる)受賞コメント

小西マサテル

このたびは拙作『物語は紫煙の彼方に』を栄えある『このミス』大賞にお選びいただき、本当にありがとうございました。ミステリ界には長らく、作家を志望する者が新人賞で落選した場合、次は改稿ではなく別の作品で勝負するべきだ、とする意見があります。尊敬すべき先輩諸氏が新人の将来を俯瞰的に優しい目線で見ているのでしょうし、それはやはり正論だと思います。ただ、自分の場合は亡父への想いをこの作品に仮託していて、どうしてもこの作品でデビューしたいという強いこだわりがありました。それだけに、今回の大賞受賞は、望外の喜びではありますが、本懐を遂げたという気持ちもあります。本作の主人公、「楓(かえで)」と同じく、自分も一人っ子です。でも、幼い頃から、そばには常にミステリという〝兄弟〟がいました。今後もさまざまな兄弟たちを自分の手で生み出すことができれば、などと思っています。重ね重ね、由緒ある大賞を頂き、本当にありがとうございました。