第21回『このミス』大賞 1次通過作品 妹はリモート探偵~謎解きはビデオ通話で~
不登校の妹が目指す、謎解きをきっかけとした学校復帰
妹の手足となって奔走する兄の努力は実を結ぶのか?
キュートなヒロインの活躍を描く〈日常の謎〉連作集
『妹はリモート探偵~謎解きはビデオ通話で~』六畳のえる
高等部二年生の秋月果偉(あきづき・かい)には、中等部三年生になる義理の妹・唯鳥(いとり)がおり、彼女は理由を秘めたまま中一から不登校を続けていた。ある夜、唯鳥から学校復帰について相談された果偉は、「復帰の一歩として、アタシ、探偵をやります」というまさかの言葉を告げられる。いきなり登校するのはハードルが高いため、リモート探偵としての謎解きをきっかけに学校との接点を持ちたいという。外に出ることのない妹と彼女の手足となって奔走する兄のコンビは、学校復帰を目標に校内の様々な謎に挑む……。
今回拝読した応募原稿のなかで、とっつきやすさでは本作がベスト。人命にかかわるような重大な犯罪は起こらず、お気に入りの鹿撃ち帽を被り、リモートで校内の〈日常の謎〉を解く中学生ヒロインのキュートな魅力を歓迎する向きも少なくないだろう。義理の兄妹の距離感やサブキャラの造形も達者で、ミステリの所作も心得ており、するする読める。ただ、いかにもシリーズの1巻目といったとっつきやすさの反面、全体に突き抜けた部分もないため、新人賞で競り勝つには弱さが否めない。また、探偵役がリモートで謎解きをする内容は映像作品も含めて先例があり、斬新とまでは正直いい切れない。この整ったマイルドさを評価するか否かで迷ったが、結果、推す気持ちが勝った。
(宇田川拓也)