第21回『このミス』大賞 1次通過作品 おまえの犬

山奥の館で犬として監禁されている少女
森の中で道に迷いくだんの館に助けを求める男女
誰もが予想しなかった邂逅が新たな悲劇の幕を開ける

『おまえの犬』遠藤遺書

 SNSで出会った雁倉という男に監禁されて、山奥の館で犬として生きるよう強いられている少女リク。ドライブ中に車が故障し、大雨の中、森を彷徨った美沙希と成未のカップルが、助けを求めてくだんの館の扉を開けたとき、惨劇の幕が切って下ろされる。
 雨宿りを乞うふたりは、応じる声がないままに館を探索し、日記を発見。そこには、異様な動機から少女を監禁する男の歪んだ内面が記されていた。一方、脱走を図ったリクにしつけをしていた雁倉は、館に侵入してきた男女を排除すべく部屋を出る。そしてリクは、このふたりと協力して脱出しようと試みる。狩る者と狩られる者。果たして生き残るのは誰か?
 視点を頻繁に切り替えて、緊張感を持続したまま驚愕のラストに向かってページを繰らせる手腕は、なかなかのものです。メイントリックにはいくつか前例がありますが、マイナスポイントではなく、むしろ処理の巧さが光ります。最後の一ひねりも効果的。十分に一次通過作の水準をクリアしているサスペンスに満ちた作品です。

(川出正樹)

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