第21回『このミス』大賞 1次通過作品 亜米利加の邪馬台国
邪馬台国は沖縄にあった!
千八百年の時を超えて過去へとタイムスリップしたスマートフォン
謎とスリルとアクションに満ちたSF冒険活劇小説
『亜米利加の邪馬台国』仙藤大猩
二〇一八年と一九四四年の沖縄を舞台に、邪馬台国の遺跡から発掘された未来から来た謎の出土品を巡る在日米軍と日本の秘密結社の暗闘を描いた、謎とスリルとアクションに満ちたスケールの大きいSF歴史冒険活劇小説です。
秋葉原でデータ修復サービス業を営む元メモリ開発者の増渕は、ジャーナリストの刀根マリの依頼で訪れた沖縄の嘉手納空軍基地で、木之下という老人から損壊著しいスマートフォンを渡されデータを取り出して欲しいと依頼される。七十四年前の第二次世界大戦末期、飛行場建設中に発見された邪馬台国の遺跡から発掘されたというそのスマートフォンは、なんと三カ月後に発売予定の機種だった。なぜスマートフォンは時を超えたのか? 在日米軍が目論む人類初のタイムスリップ観測実験は果たして成功するのか。
半永久的に記録を保存できる画期的メモリというアイディアを核に、ロボット工学や量子理論を用いて融通無碍に織り上げられた波瀾万丈の物語だ。謎と意外性に満ちたミステリでもあり、なにげなく読み進めていると、意外なタイミングで伏線が回収されて思わず膝を打ってしまう。増渕と刀根の主役コンビのやり取りも楽しく、サポート役や敵役も皆個性的。やや冗長な部分もあるが、自信を持って一次通過作として押せる作品だ。
(川出正樹)