第20回『このミス』大賞 1次通過作品 BURLESQUE ―バーレスク―
いくつもの顔を持つ男。
はたしてその正体は?
さまざまな語りの向こうに浮上する、意外な構図とは……
『BURLESQUE ―バーレスク―』瓜生雄輝
さまざまな視点からの語りを通じて、ある男の人物像が少しずつ浮かび上がる物語だ。
趣味で女性の裸体を撮る唯香は、自分を撮ってほしいという男・詩之宮との出会いを経て、セックス依存症気味だった生活を変えていった。
図書室しか居場所のない高校生の渚は、図書室を管理する詩之宮先生と、本を通じて互いを理解し、やがて秘密を共有するようになる。
……と、詩之宮という男と関わりを持った人々の語りが積み重ねられ、彼の人物像がさまざまな角度から描かれる。表と裏どころか、いくつもの顔を持つ男。互いに矛盾を感じさせるようなものではないが、それらをつなぎ合わせて浮かび上がる姿は、ぼんやりとして掴み難い。やがて、ある事件を追う刑事が登場し、そこに詩之宮が思わぬ形で関わってくる。
万華鏡を覗きこんだような、多彩でありながら統一された印象もある前半は、詩之宮の謎めいた姿が忘れがたい印象を残す。
ある事件の構図を解明しようと刑事が奔走し、意外な結末へと着地する後半は、やや詰め込みすぎで粗さを感じさせるものの、その大胆な展開で読ませる。
多少のマイナスがあっても、推したくなる魅力を備えた作品だ。
(古山裕樹)