第20回『このミス』大賞 1次通過作品 大麻村

素人の若者四人が大麻栽培
一気に成功したとたん
やくざたちとの争いに

『大麻村』新田総一

 鳥久保賢斗は大学を卒業して、エリート銀行員になろうとしている。そこへ中学時代の友人青木優斗から卒業以来の電話がきて、会いたいと言う。東京近郊の地元まで行くと、青木はやばい従兄弟門田から大麻をもらったからやらないかと言う。やってもいいと返事すると、喫うのではなくて栽培するのだと言うから、即座に断る。
 ところが入社直前に大不況となって就職できなくなり、慌てて再び就職活動をすると、マグロ漁とか解体工事しか仕事がない。アパートも追い出されてベンチで寝る羽目になって、やむなく青木の誘いを受け入れる。
 さらにふたりの中学の同級生が加わって具体的な栽培が始まり、この四人が適材適所で活躍する。まず青木の従兄弟の門田から裏社会の説明を受ける。『最後の虎』という異名の大物が大麻市場を支配しているから、割り込むと攻撃を受けるだろうと。
 思いつきで、限界集落で引きこもりの若者の共同生活を装って、栽培を始める。
 ここから偶然が重なって思いがけない幸運が続く。地元に元やくざのじいさんがいて、アドバイザーになってくれて、閉鎖する化学工場を栽培場所にすることを勧められる。
 三週間大麻の世話をするだけでヘトヘトになっている四人には、一万株まで増やせると言われても到底無理だった。そこへ東京で女優が大麻で捕まって、自粛せざるをえない栽培グループが生まれる。そこへつけ込んでスケールを広げ、大成功する。なにしろ一ヵ月十億円も入るのだ。そこからやくざ組織との対決まで一気に進む。
 顧問に迎えた元やくざの前田の生首が送りつけられたりするなかで最後の作戦へ動くと、思いもよらぬ結末が待っている。
 全体の若々しいトーンは好感が持てるし、一度インドで喫った大麻の快感まで気持ち良く思い出せた。

(土屋文平)

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