第18回『このミス』大賞　次回作に期待　古山裕樹

『雨粒のように/just like raindrops』藪坂華依
 
　藪坂華依『雨粒のように/just like raindrops』は、地域医療をテーマにした物語。
　小説としては人物描写もストーリーもしっかりして、完成度の高さは他の作品に決して劣らないものでした。ただ、ミステリー要素の弱さが気になりました。いちおう、途中で謎が提示され、最後に解決が与えられるのですが（その見せ方も悪くなかったです）、小説としての充実ぶりに比べると、どうしても「えっ、それだけ？」という感想が浮かんでしまいます。通常の小説に、小道具として謎の要素を付け加えたような印象を受けました。
　それでも、ミステリーとして推せる作品がなければ、本作を選んでいたかもしれません（第1回の受賞作『四日間の奇跡』も、ミステリー要素の至って希薄な作品でした）。ただし、今回はそういった要素をより強く押し出した作品があったので、そちらを優先しました。
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