第18回『このミス』大賞1次通過作品 君が幽霊になった時間
学園祭のお化け屋敷で少女が絞殺された
同級生コンビがロジカルに犯人を暴く青春ミステリー
『君が幽霊になった時間』泡沫栗子
九月下旬の土日に催される羊毛高校文化祭。その二日目の午後、二年生・旭川明日葉の変死体がお化け屋敷で発見された。彼女に想いを寄せていた「僕」こと閑寺尚は、同級生の甲森瑠璃子に呼び出され、強い口調で「彼女の死の真相を、私は解明したいと思ってます。君を呼んだのは、それに協力して欲しいからです」と告げられる。甲森が盗聴した事情聴取によると、首吊り幽霊に扮していた旭川はロープで絞殺され、死体と気付かれずに放置されていたらしい。
甲森が「問題を解く上で核になってくるのは、旭川明日葉が殺された時間でしょうね」「首吊り幽霊を演じていた旭川明日葉は、いつ本物の幽霊になったのか」と方針を示し、二人は現場検証や聞き込みを重ねていく。やがて甲森は真相に辿り着くが、その先には苦い現実が待ち受けていた。
キャラクターや独白はライトノベル風だが、分刻みの”時間当て”で犯人を絞り込む解決篇はすこぶる本格的。情報が揃ったところで挟まれる”読者への挑戦”はベタなりに楽しく、探偵コンビの悲哀も印象に残る。学園本格ミステリーとしては及第点以上だろう。小説としての平板さと掴みの弱さは否めないが、構成を変えて前半の退屈さをカバーできれば、傑作に化ける可能性は十分にある。謎解きのセンスはあるだけに、表現力の向上を促すためにも、応援を兼ねて二次選考に残したい。
(福井健太)