第18回『このミス』大賞1次通過作品 パンドラの微笑み
連続人体発火の謎を追う公安捜査官・麻衣
謀略と暗闘
黒よりも黒い漆黒の必要悪に対峙した時取った行動とは!?
『パンドラの微笑み』西宮柊
警察組織に焦点を当て、正義と悪とが表裏一体の関係にある中、必要悪をテーマに公安警察の謀略と暗闘を描いた作品です。
帝都大学の危機管理学部新設記念式典に来賓として招かれた元警察庁長官・岸田が、突然発火し焼死した。岸田による警察内部の情報漏洩疑惑解明の命を受け、大学に潜入していた警視庁公安部の警部補・桜庭麻衣のまさに目の前で。しかも現場から逃げ去った黒ずくめの女を追跡した麻衣の部下三人が、一瞬のうちに惨殺されてしまう。大失態を演じた麻衣に対して、公安部内の極秘組織ゼロを率いる裏理事官は、十五年以上前に七人の公安捜査官を殺害しパンドラと名付けられた謎の女の存在を告げ、新たなメンバーとともに極秘裏に捜査するよう命じる。だが、当時パンドラ事件を捜査をしていた首席監察官もまた、麻衣の目の前で突如燃え上がり焼死してしまった。警察組織内部に連綿と存在する、黒よりも黒い漆黒の正義。必要悪の存在に気がついた麻衣が最後に取った行動とは?
複雑なプロットを構築し、大勢のキャラクターを描き分け、途中で中弛みすることなく仕立て上げた筆力に感心しました。人体発火のトリックが見当が付きやすい上に実現性と確実性に欠ける点、真犯人の正体に関する伏線がほとんど張られていない点、謀略の真相に新鮮味が不足している点など瑕疵も多い作品ですが、まずは一次通過作の水準はクリアしていると思います。
(川出正樹)