第15回『このミス』大賞1次通過作品 三好昌子

悪縁により生い先短い不運な娘を救うべく、
謎の修験行者が施す大いなる“秘術”とは?

『縁見屋の娘』三好昌子

 京の口入屋「縁見屋」の娘は、男児を産むことはなく、二十六歳で死ぬ――。お輪は、母も祖母も曾祖母も、その悪い噂のとおりの運命をたどり、自身もそのあとに続くであろうことを憂いていた。ある日、“帰燕”と名乗る修験の行者が愛宕山からやってくる。お輪に想いを寄せる徳次は、帰燕に代々の悪縁を祓うよう頼み込む。やがて、お堂から発見された「天狗の秘図面」にまつわる女の怨念が明らかに。時を経た天明八年、ついに帰燕はお輪を救うべく“秘術”を施そうとするが、そのためには京の大半を巻き込むほどの大きな“力”が必要だった……。
 今回に限らず、これまで一次選考で目を通した応募作のなかでも筆力はトップクラス。瑕疵の多い文章、意味不明な描写、拙い表現に幾度も躓いて顔をしかめることもなく、普段売り場で扱っている商品と同じように物語を追うことができた。技量、作法、演出力は、なんなく一次をクリアできるレベルである。
 しかし、二次へ上げるには少なからぬ躊躇があった。読ませる時代伝奇ロマンではあるが、ミステリーとして物差しを当てると、大いに目を見張らせ、新風を吹き込むほどの意外性や驚きに欠けてしまい、どうにも美点を挙げづらくなってしまうからだ。う~む、どうしたものか……と悩みもしたが、考えてみれば本賞は第一回で『四日間の奇蹟』に授賞しているではないか。ここで私ひとりが「ミステリーとして~」などと逡巡する必要はなにもあるまい。そう思い至り、気持ちを改めて二次に推す。

(宇田川拓也)

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