第15回『このミス』大賞 次回作に期待 土屋文平
『アジアを巡る冒険』又井健太
『魔少年の戦争論』鷹季利勇
『泣きっ面にガスタンク』玄界鳥人
『アジアを巡る冒険』
タイトルのとおりで、友人の残した謎を見つけにアジア各国を訪ねる様子は、ディテールも詳しくて安心して読める形に仕上がっていました。出会う人たちも多彩でそこそこ深刻な事件にも巻き込まれるのに切迫感に欠ける印象なのは、エネルギー不足なのか、どこか書きなれた印象がするせいなのか、もの足りなさが残りました。
『魔少年の戦争論』
いじめを受けた高校生が証拠を冷静に集めて、教師や親、教育委員会までやりこめるという現代的なアイデアには感心しました。主人公の中国史好きという設定もユニークです。その後の展開や3年前の事件が出てくると、嘘くささが楽しめなくなりました。名前の付け方もいただけません。
『泣きっ面にガスタンク』
おならをした犯人を捜すという世界初のミステリーを思いついたのは評価します。突然暴発させてしまう病気の主人公を描き切って、これならいろんな滑稽な病の主人公のシリーズができるかも、と思わせてくれました。もう少し深刻な事件と絡ませたほうがよさそうです。
他にも病院のディテールがよく書けていた作品がいくつかと。未来がテーマの作品など心に残るものがありました。しっかりしている部分があると余計に足りないところが目立ちます。今一歩の感が強まるのです。これからもぜひ書き続けていってほしいと願っています。クローンや新興宗教を出すのは安易すぎて危険です。
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