第15回『このミス』大賞1次通過作品 綾見洋介

母の遺言に従って尋ねた男は一家惨殺事件に巻き込まれ30年前に死亡
北海道を舞台に古今に張り巡らされた数々の謎が襲う

『小さいそれがたくさんいるところ』綾見洋介

 東京の大学生白木恭介は母親ががんで亡くなるのを父親と看取る。遺言で子供の頃暮らした北海道の田舎で出会った佐伯義春という青年にもらったロードクロサイトという珍しい石を返してあげてほしいと頼まれる。ネットで調べると鉄道マニアの好む秘境駅のようで、ゴールデンウイーク直前に千歳の空港から十勝の田舎へやってくる。このあたりは落ち着いた語り口で好感が持てる、そこから40前の工場勤務の吉井悠司へ主人公が変わり、こちらは鉄道おたくであまりまともな人間ではなく、白木と同じ日に同じ駅へ行く。白木は町役場を訪ねて母の言った場所には誰も住まなくなっていることを知り、当時のことを聞けそうな老女へたどり着くと、そこでは30年前に一家惨殺事件が起きていて佐伯も巻き込まれて死んでいるとわかる。このあたりから登場人物はやたらと増えるし、昔、炭鉱町として栄えたころの隠し金なんて出てくるし、昔の事件はわからないままで新しく鉄道マニアの死体を発見したりで混乱してしまう。まあいろんな伏線は張ってあるし、情報の量が多いのはサービス精神と言えなくはない。
 わざわざ二人の視点を作ったことの効果はあるのか疑問のまま読み終えて、ややこしいお話を書きたかったのなら成功しているのかも、と考えなおしました。北海道の田舎という地味な舞台で、なんだかにぎやかな事件を起こして、ずいぶん昔の話を今とつなげて、という意欲はありそうです。

(土屋文平)

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