第15回『このミス』大賞1次通過作品 物語の終わり

呪いと除霊を科学で解く?
怪しげな占い師と精神科医が
女子中学生に依頼された難問に挑んで

『物語の終わり』君野新汰

 若い女性なのに短髪で自分のことを俺と呼び乱暴な口をきく占い師立花操のところへ、中学2年生の女子渡会里夏がやってくる。占いの館の中の、因縁、呪い、各種霊障についての占いも可という看板を見て、自分の呪いを解いてほしいと助けを求めて来たのだった。立花は心理学の専門家の年上の友人、大柄でボサボサ頭の霧乃秋彦の家へ連れて行って、里夏の相談を一緒に聞くと、この夏休みに突然両親の前で意識がなくなり、殺す、死ねと狂った様子で叫ぶ発作を起こすのだという。救急外来でいろんな検査を受けても異常はなく、発作は治らないので精神科を勧められると、母親は除霊師の二人組を呼んで何度も儀式を繰り返す。効果のなかった除霊の様子は3人でビデオで見てから両親の待つ里夏の家を訪ねて、霧乃は大学病院の精神科にいたこともあるから自分が治療すると言い、家族揃っての読経や違う形の除霊を押し付ける。帰りの車の中で立花は霧乃を詐欺師とからかうが霧乃は冷静に反論する。このあたり、ホームズとワトソンの変形といえなくもない。そこからは解決まで進んで最後にちょっとヒネリも用意されている。
 ともあれミステリーらしくはならないままだし、立花と霧乃の関係を説明するサブストーリーがないと単調すぎて厚みも出ない。
 それでも評価したいのは、物語を始めるよりヒトの心の複雑さをなんとかして表現してみたいという切実さが妙な雰囲気を漂わせているからで、こんなヘンテコな話は他に誰も思いつかないだろうなと感じさせたから。

(土屋文平)

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