第15回『このミス』大賞1次選考通過作品 岩木一麻

余命半年の宣告を受けた患者たち
半年後、彼らの身体からがんは消え去っていた
一体がん治療の世界で何が起こっているのか

『救済のネオプラズム』岩木一麻

 先に申し上げておくが、一度『このミステリーがすごい!』大賞に応募して落選した作品を、ちょこっと直して送られるのは困る。タイトルを変えたりしても、簡単に判明する。
 但し、完全に新しい話に書き直していれば話は別だ。本作『救済のネオプラズム』は、二〇一四年第十三回『このミステリーがすごい!』大賞で一次選考を通過した『完全寛解』の一部プロットを転用して、全く別の作品として執筆したもの、とのこと。しかもその際の審査員のアドバイスに従って書き直したという。第十三回の選考過程を参照したところ、確かに全体のストーリーライン自体が変わっているようだ。これはきっちり評価せねばなるまい。
 日本がんセンターに勤める夏目典明は、大学の後輩で生命保険会社に勤務する森川から、不正の可能性のある案件について質問を受けたことをきっかけに、夏目から余命半年の宣告を受けて保険金を受け取った患者複数が、その後も生存しているどころかがんが消え去っているという事実を知る。夏目は、変わり者の友人でおなじくがんセンター勤務の羽島悠馬とともに、調査を行う。何者かが、新たな治療法を開発したというのか。
 そんな裏で、独自のがん治療を行っており、がんにかかった有力者たちから支持を受けていたのは、夏目の恩師である西條征士郎だった。
 果たして、がん治療の世界で、何が起こっているのだろうか。
 ストーリーの根幹をなすトリックは「こんな手があったのか!」と思わず膝を打つほどで、非常に興味深かった。おそらくこの部分を転用し、全体のストーリーを新たに組み上げたのだろう。
 但し、医学解説の部分が、全体的にちょっと長い印象がある。説明でもたつくと、読者を足止めさせてしまう。もう少し、すんなりとストーリー展開の中に混ぜ込むべきだろう。また、解説が多い分、物語全体の動きが少なくなっている印象がある。もう少し、ダイナミックに話を動かした方がいいかもしれない。
 また、本作も書き換え前の前作も「がんミステリー」である。デビューした場合になるべく広い範囲のものが書けないと、作家としてはやっていけない。本作が受賞するしないは別として、一度、全く別なものも書いてみるべきだろう。
 前作からどこが違うか、どれだけ改善されているか。それは、前作も読んでいる二次選考委員の諸兄の判断にお任せすることにしよう。

(北原尚彦)

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