第15回『このミス』大賞1次審査通過作品 クライム&パニッシュメント
刑事が山中に埋めた轢死体は
薬指を切り取るシリアル・キラー
だが半年後、犯行が再開される……
『クライム&パニッシュメント』井塚智宏
本作は刑事を主人公としているが、並みの警察小説とは全く異なる。何せ主人公は、警察官であるにもかかわらず、轢き逃げ死体を山中に埋めるのだ。
警視庁国立署の二宮は、高校時代の同級生・生田里紗と、その恋人でやはり同級生だった長谷部と飲食する。だがその帰り道、里紗が飲酒運転していた車が中年男を轢き殺してしまう。
しかし中年男の荷物から、彼が連続殺人鬼「サージョン」であることを示す、切り取ったばかりの人の薬指が出てくる。二宮は殺人鬼のために自分たちのキャリアを台無しにすることはない、と死体を始末することを主張。かくして死体を埋めることになった。
ところが、その半年後。薬指を切られて惨殺された女性の死体が発見される。現場に急行した二宮が見たものは、理沙の無残な死体だった。
二宮は、金髪にサングラスという格好の警視庁捜査一課の刑事・天童とコンビを組んで捜査することになる。天童は型破りな警察官ながらも、頭の切れる男だった。二宮は調査をしつつも、自分に関することは隠蔽しなければならなかった。果たして「サージョン」は生きているのか……。
真相は一体どこにあるのか、物語はどのように終結するのか。先が気になって気になって、どんどん原稿のページをめくり、あっという間に読み終わってしまった。設定も、謎も非常に魅力的だ。文章はなめらかで引っかかりを感じないし、キャラもしっかり立っている。
人物の行動原理にやや疑問の感じられる点があったが、ここではそのようにキャラクター造形されているのだということで納得しておこう。またタイトルはドストエフスキー『罪と罰』由来だが、これはもうちょっと違う形に改題した方がよいのではないだろうか。
……などなど、瑕疵はあるけれども一次選考クリアの水準は充分に超えている。即戦力になりそうな作者であることは間違いない。
(北原尚彦)














