第15回『このミス』大賞1次通過作品 志駕晃

スマホを拾ったハッカー殺人鬼の魔手が迫る
ネット社会の恐怖を描くサイバーサスペンス

『パスワード』志駕晃

 稲葉麻美が恋人の富山誠に電話を掛けると、知らない男のハスキーな声が返ってきた。男は富山のスマホを拾ったらしい。麻美はスマホを受け取るため、駅前の喫茶店で男に逢う。しかし男は有能なハッカー(クラッカー)にして、二十人近くの女性を殺した殺人鬼だった。男はスマホから情報を盗み、カード詐欺やランサムウェアで富山を陥れ、麻美を脅して彼女を手に入れようとする。女性たちの死体を発見した刑事の毒島と加賀屋は男を追うが、男の身元は一向に掴めなかった。
 殺人鬼ハッカーの陰謀を描くサイバーサスペンス。ネット社会の危険性をリアルに描くストーリーは目を惹くが、本作の見所はそれだけではない。大量殺人鬼、狙われる女、警察の視点を切り替えつつ、平明な文章で綴られる物語には、複数の逆転劇が仕込まれている。ネットやスマホの知識が蘊蓄に留まらず、恐喝の手段やヒロインの危機を救う機能など、多面的に利用されているのもポイントは高い。魅力的な題材とシチュエーションを用意し、そのポテンシャルを活かしきった佳作。二次選考に強く推したい。タイトルは変えたほうが良いだろう。

(福井健太)

通過作品一覧に戻る

作品を立ち読み