第14回『このミス』大賞 次回作に期待 杉江松恋氏コメント

『夢うつつ』真鍋かれん
『縞猫に甘い夢を』宮代匠
『特命芸人』白野中延

杉江松恋コメント

「特命芸人」は、売れない芸人が科学者による実験結果捏造というどこかで聞いたことがあるような事件に巻き込まれるということから始まる物語である。なぜその二つが結びつくのかといえば相当強引なプロットによってそうなるのだが、力技で無理を無理ではなくさせるのも腕のうちであろう。私はこの無茶な話をおもしろく読んだ。ただし、あまりにもごちゃごちゃしすぎており、芸人の佐藤に都合よく事態が進みすぎる。つまり、作者の思惑通りにすべての登場人物が動いているのである。作中人物も人間である以上、行動には一定の合理性がなければいけない。作者は一度、自作における人物設定やタイムスケジュールを見直したほうがいい。そうすれば改善点はおのずと見えてくるはずだ。
「夢うつつ」はまったく意外な形で物語が転がっていく小説だった。○○○小説、とカテゴライズすることはできるのだが、改稿されるかもしれないのでネタばらしは遠慮しておこう。特異な設定の登場人物を転がしていく手つきには素人臭いところがなく、おそらく天性の物語能力の持ち主だろうとお見受けする。ただし、細部の設定などに乱暴な点が多すぎる。作中のリアリティを確保するために、ちゃんと取材をして考証を行うこと。それから、あなたの応募原稿には規定量の梗概がついていませんでした。これは本来ルール違反なので、次回はきちんと文章量を守って梗概もつけてください。
「縞猫に甘い夢を」は、日系人が強制収容所送りになった第二次世界大戦中の出来事を下敷きにした内容で、ハードボイルドの形式に則った折り目正しい大人向けの小説だった。文章自体にはすでにけちのつけどころはない。ただ、こうした小説の弱点として、事実の明かし方が単調になると、どうしても物語に対する興味は沈下してしまう。次に気をつけるべき点はサスペンスの醸成だろう。どう書けば読者に宙吊りの感覚を味わえるかということを検討してみてもらいたい。

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