第14回『このミス』大賞 1次選考通過作品 海江田水戸

虐待されて育った少年、孤立気味の少女
その周囲で起こった殺人とは……?

『十四番目の月が上る』海江田水戸

 Webサイトに公開される作品の冒頭部分を読んで、晴れやかな気持ちになる人はまずいないだろう。
 母親からは「いなくなってほしい」と邪魔者扱いされている少年。幸い、これまで母のもとに転がり込んできた男たちが子煩悩で、それなりに彼の面倒を見てくれたおかげで、なんとか生き延びることができた。だが、今度の男は最悪だった。男は彼を痛めつけ、母はそれを気にも留めない……。
 並行して語られるのは、農園を営む父と暮らす少女の物語だ。七年前、母の運転する車に乗っていて事故に遭遇した彼女。母は命を落とし、彼女は足に後遺症を抱えている。農園の温室で、自堕落な叔父に襲われた彼女は、なんとか逃げ延びた。その夜、彼女の家は火事で焼けてしまった……。
 過酷な境遇で生き延びてきた少年と、身体に傷を抱え、クラスでも孤立気味の少女。並行して語られる二人の物語はやがて交錯し、ある人物の死をめぐる謎を追う物語へと変貌する。
 他人に心を閉ざすのが当たり前。友人もほぼいない。そんな不器用な人付き合いしかできない二人が、ある秘密を探るために行動を共にする。そのぎごちない協調関係が心に残る。
 うんざりするような環境に置かれた少年と少女の日々をじっくりと描きながら、その中に謎と秘密を埋め込んでみせる。真相解明に至るプロセスを丁寧に描き、そして意外な結末へと到達してみせる。
 決して、心躍る物語とは言えない。だが、読む者を捉えて離さない、最後まで読ませる作品に仕上がっている。

(古山裕樹)

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