第14回『このミス』大賞 1次選考通過作品 小和田ワコ

ヤミ金の事務員から、詐欺グループの幹部へ
汚れた社会を生き延びる女の運命は……?

『女詐欺師』小和田ワコ

 電話をかけて「もしもしオレだけど、実は事故に遭っちゃって……」と言葉巧みに口座への振り込みを誘導する。今や誰でも知っている、その割に被害の絶えない詐欺の手口である。本作は、そんな詐欺が多く発生するようになった2001年に幕を開ける物語だ。
 故郷の観光旅館に就職し、東京支店で働いていた小雪。だが、東京支店は撤退し、彼女は退職して東京に残ることを選んだ。見つけた仕事は「トラスト信販」という会社の営業アシスタント。彼女はすぐに、そこが法定以上の利息をとる闇金であることに気づいた。とはいえ背に腹は代えられない。勤務を続ける小雪は、やがて意外な才能を開花させる。ある日のいたずら電話をきっかけに、彼女とその会社は、新たな詐欺ビジネスに乗り出した……。
 故郷に帰りづらかったがゆえに東京に残ったヒロインが、闇金と詐欺の世界に身を置くうちに遭遇する、変節と裏切り、そして策略。小雪の人生の変転と、詐欺師たちの騙し合いを描いた犯罪小説である。……と書くと、多くの方がコン・ゲームものを連想するだろう。
 確かに、そんな要素が皆無というわけではない。ただし、作中の人々が繰り広げる策略は、意外と穴の多いものである。かの詐欺の手口も、聞いてみれば「なぜそんなのに騙されるんだろう?」と思うような、単純なケースが少なくない。ここに登場する人々は、誰もが狡猾であると同時にうかつでもある。巧妙に相手に罠を仕掛けながら、時に自分が稚拙な罠に足を取られる。物語を駆動するのは、人々の欲望と嫉妬、愛情と憎悪。そんな感情の絡み合いだ。研ぎ澄まされた策略がぶつかりあう知能戦を期待する向きには物足りないかもしれない。だが、ひらめくこともあればヘマもする、そんな人間たちの織りなす物語としては十分に楽しめる。置かれた環境によって、ヒロインの内面と外面が変わっていくさまもまた忘れがたい。

(古山裕樹)

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