第14回『このミス』大賞 1次選考通過作品 井塚智宏

ネットカフェ難民の若者が出会ったワケありの人々
四つの事件からなる連作ミステリ

『ネットカフェ・チルドレン』井塚智宏

 ネットカフェをねぐらとする若者ショータが、バイト先や街中でワケありの人々と出会い、事件に巻き込まれ、謎を解く、全四篇からなる連作ミステリです。
 製薬会社による新薬の臨床試験ボランティアで出会った同年代の引き籠もり青年の墜落死。スリに憧れ修行中の若者が、中年の男から抜き取った財布の中に入っていた女子高生の写真に纏わるねじれた陰謀。事故物件の告知義務解除の為に、曰く付きのアパートでの短期生活のバイトを始めたショータの前に現れた、死んだはずの少女。そしてショータ自身のアイデンティティーにかかわる流行作家絡みの殺人事件。
 始めの三つの事件は、いずれもネタとしてはわりあい小粒ですが、現代社会の抱える諸問題を中心に据えた上で、正面から謎解きミステリを書き、きちんと辻褄を合わせている点に感心しました。
 そしてこれらに続いて語られる最終話で、一見、どこにでもいそうな若者であるショータが、いつから、なぜネットカフェ難民となったのか、人生とどう向きあっているのか、そしてこの先どうするつもりなのかといった作品全体のリアリティにかかわる大きな謎とテーマを明らかにしていきます。この手法自体は連作ミステリの定番ですが、意外な事実が判明して、主人公の成長を感じさせる締めくくり方は、まずは及第点と言えます。
 キャラクターの造形の面で、鍵を握る人物が、あまりにも実在する若手流行作家やアイドル・グループに似すぎている点は、リアリティを担保するというよりは、手抜きに見えてしまうという欠点はありますが、何とか一次通過レベルには達しています。

(膳所善造)

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