第14回『このミス』大賞 1次選考通過作品 高階文彬

最新の訓練を受けた自衛隊員の起こす不可解な事件
様々なトラブルを起こす私立学校の生徒たち
謎のシステムは一体何をもたらすのか?

『偽りの報酬』高階文彬

 饗庭博孝(あえば・ひろたか)は陸上自衛隊の小隊長だった。米国での協同訓練で新歩兵システムOWのテスト作業に加わっていたが、部下が事件を起こし、更迭される。即応予備自衛官の訓練担当となるが、かつての部下が相次いで事件を起こしていることを知り、その原因を探る。
 一方、私立光邦学園でスクールカウンセラーをしている香月朱音(こうづき・あかね)は、勝手に校庭の植木を切り倒そうとする生徒や、ほとんど寝ずに勉強をし続ける生徒など、異常な行動を取る子どもたちが出現するようになったことに、苦悩していた。そしてあまりの状況に、これはおかしい、と考えるようになる。
 しかし両者の事件はどんどん大きくなっていき、ついには社会をも揺るがす大きなうねりとなっていくのだった……。
 本作は基本的に二本の軸――陸上自衛隊パートと光邦学園パートから成り、それが交互に語られるが、最終的には一本化されてクライマックスへと向かう。アクションと謎の解明とがうまく絡み合っており、さくさくと先に読み進めさせる牽引力となっていた。主要なキャラクターが平板でなく「深み」を持って設定されているところもポイントが高かった。終盤の戦闘シーンでの意外な人物の活躍も、なかなか楽しい。
 自衛隊の訓練模様などが、しっかりと描かれているのも好印象。ただし、時々説明過多の部分がある。その一方で、登場するシステムの詳しい内容があまり説明されない。後半である程度は説明されるが、もう少し早めにしておくべき。そのように、全体としてバランスの悪さがちょっと目に付いたが、それらの部分の調整は十分可能だと思う。システムの細部など、もちろん事実でなくてよいのだから「それらしく」描き出して欲しい。
 作者は、別名義で既に小説家としてデビューしており、単行本も何冊もあるという方で、今回、心機一転を図るために「このミス」大賞に応募したとのこと。本作品に百点満点は差し上げられなかったが、がんばって頂きたい。

(北原尚彦)

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